見取図について

世界遺産日光の社寺は、年間を通じ、雪・雨が多く、湿度が高い、建造物装飾の彩色保存環境としては、厳しい自然環境であり、歳月を経る内に、彩色が剥落しその輝きを失う。

世界遺産日光の社寺建造物は、元和5年(1619)以降の建造物で、東照宮は寛永13年(1636)の造替、輪王寺大猷院は、承応2年(1653)の造営である。 建造物の外部彩色は、江戸幕府の手厚い保護のもと、約20年周期の定期的な修復が連綿と続けられ、彩色は、その美しさを維持してきた。

彩色見取図制作中の写真 現在、日光の社寺に、江戸期の彩色見取図は、残されていないが、明治以降、約4000枚の見取図が製作され保存されている。 彩色見取図は、形や色彩を描き留めると同時に、余白に細かい技法・微妙な色合いなどの表現方法を記している。 彩色が剥落しても、見取図の彩色技法の指示に従えば、完全に彩色を復原することが可能である。 彩色見取図とは、後世の職人に彩色技術を伝承するための修復記録である。(写真は彩色見取図制作中)